副業・兼業を希望する従業員は年々増加傾向にあります。
原則として副業自体を禁止することはできず、副業を禁止するには相応の理由が必要になります。
(副業の禁止について、詳しくはこちら )
副業が増えるとともに、
「労働時間の通算、残業代の支払い」、「社会保険や労働保険の取り扱い」、「従業員の健康管理」、「秘密保持義務」
など会社はこれまでとは違った管理や対応をしなければいけません。
特に副業をすることになれば自ずと労働時間が増え、残業にあたる部分も増えることが考えられます。
今回は副業をしている従業員の残業代の考え方について説明します。
法律では原則として、
「1日8時間 週40時間を超えて労働させてはならない」とされ、これを超えると2.5割以上の割増賃金、いわゆる残業代を支払う必要があります。
ここで副業をしている従業員の労働時間については「個々の会社での労働時間」ではなく「通算して」考えることに注意が必要です。
※副業を個人事業主で行っている場合(会社に雇われていない場合)は通算する必要はありません。
例えば、A社で「7時間」働いたあとにB社で「2時間」働いた場合には、通算して「9時間」働いたことになります。
そして、8時間を超えた分の「1時間」について残業代が発生することになります。
A社もB社も1日8時間を超えて働かせていないのに、どちらの会社が残業代を支払うのでしょうか。
副業時の残業代は、基本的に「後から契約をした会社」が支払うこととなっています。
上記の図の例でいうと、
A社(本業)で 1日の所定労働時間 7時間 で契約
B社(副業)で 1日の所定労働時間 2時間 で契約
をし、同じ日にA社とB社で働いた場合、B社が1日1時間分の残業代を支払うことになります。
ただし、A社で1日7時間を超えて働かせた場合は、7時間を超えた分についてはA社が残業代を支払います。
例えばA社で8時間働かせた(契約よりも1時間多く勤務)後にB社が2時間働かせた(契約の時間通り)場合、
通算して「10時間」働いたことになり「2時間」の残業が発生しますが、残業代の支払いは次の通りになります。
A社:7時間を超えた分の「1時間」分
B社:当初の契約通りの「1時間」分
B社は、A社で1日7時間勤務することを把握したうえで後から契約しているので、B社で2時間働かせれば1時間の残業が発生することがわかります。ですので、この1時間分についてはB社に支払い義務があります。
一方で、A社がB社での副業を許可した場合、A社で7時間を超えて働かせれば残業となることはA社も当然にわかることとなります。
残業となることを知ったうえで7時間を超えて勤務させたので、その残業代の支払い義務はA社にあるといえるでしょう。
※あくまでも原則になるので、双方の会社でどのように契約をしているかで残業代の支払い義務は変わります。
従業員の副業を許可する場合は、これまでになかった残業代の支払いが増えることも念頭に置く必要があります。
従業員の副業が増えると会社は様々な対応を考えることになりますが、まずは「労働時間を適正に把握」し管理をすることが求められます。
従業員に副業を申請させること、契約(所定労働時間)を確認すること、実際の労働時間を把握することが必要です。
副業の申請フローや社内ルールについて一度考えてみてください。