副業の禁止はできるのか

副業の禁止はできるのか

2023年5月12日

副業・兼業を希望する従業員は年々増加傾向にあります。

「自社の業務に専念してほしい」「企業秘密が漏れるかもしれない」と、副業を禁止したいと思う会社は多いかもしれません。実際に、「副業を禁止する」旨を就業規則に定めている企業様も多く見られます。

会社でルールを定め副業を禁止することはできるのでしょうか。

●副業は禁止できない!

本来労働時間外のプライベートな時間は従業員の自由ですから会社が制限することはできず、原則として副業も禁止はできません。

でも、だからと言って好き勝手に副業をしてしまうと業務に支障が出たり、会社の信用失墜につながる可能性もありますね。

従業員には「信義に従い誠実に」業務を履行する義務があるので、プライベートの時間であっても会社にとって不利益になることをしてはいけません。

ですから必要があるときには会社は副業を制限することができます。

では、どんな時に制限することができるのでしょうか。

●副業を制限する4つの事由

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業を制限できることが許されるのは次の4つの事由に該当する場合とされています。

①労務提供上の支障がある場合

②業務上の秘密が漏洩する場合

③競業により自社の利益が害される場合

④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

どんな時にこれらの事由に当てはまるのかは、各々の会社の業務内容や労働時間等によっても異なりますが、副業をすることによって業務や会社に影響があると認められる場合は副業を制限できるということです。

反対にいうとこれらの事由に当てはまらないと従業員が主張した場合は、制限が認められない可能性もあります。

トラブルを未然に防ぐためにも、従業員が納得して業務に従事するためにも、就業規則で副業禁止の事由を詳細に定めて意識を合わせておくことが必要です。

※就業規則に定められていても不合理なものは無効とされます。

●副業のメリット

副業の解禁を躊躇する会社様も多いですが、副業の解禁は従業員はもちろん会社にもメリットがあります。

■従業員側のメリット

・収入が増える、将来の不安に備えることができる。

・現在の仕事とは違うスキルや経験を得ることができ、活躍できる場が広がる

・現在の仕事で必要な能力を伸ばす、応用することができる

■会社側のメリット

・優秀な人材を確保することができる

・従業員のスキルや自主性を伸ばすことができる

・従業員が社外から得た知識、情報、人脈を活かして事業発展につながる

副業を解禁することで、従業員は収入が安定するだけでなく在職しながら様々なスキルを身に着けることができますし、会社としても優秀な人材の確保や事業発展につなげることができます。

これからは「禁止」をしてしまうのではなく、「上手に付き合う」ことで双方のメリットを引き出すことが理想ですね。

●副業の留意点

実際に従業員が副業をすることになったら、会社は留意しなければいけないことがいくつかあります。

①長時間労働防止

会社には安全配慮義務があります。長時間労働により労働者の健康が損なわれないよう配慮しなければなりません。

また、労働時間を通算して、「時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間未満」になるように留意する必要があります。※労働時間の通算が必要になる場合

そのため、副業での所定労働時間や労働時間を申告させ管理することになります。

②時間外労働手当を支払う可能性がある

本業での労働時間と副業での労働時間を通算して、法定労働時間を超える場合は割増の時間外労働手当を支払う必要があります。

本業の会社、副業の会社のどちらに時間外労働手当の支払い義務があるかは少し複雑なので、別の記事で説明しますが、やはり①と同様労働時間を管理しておかないといけないということです。

③秘密保持義務

副業をすることで情報漏洩するリスクが高くなりますから、「業務上の秘密となる情報の範囲」や「秘密を漏洩しないこと」について注意喚起をする必要があります。

④誠実義務

副業により会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合には副業を禁止しなければなりませんので、就業規則に記載しておきましょう。

また、副業の届出の際にそれらの行為がないか確認しておくことも必要です。

⑤社会保険の手続き

雇用保険は「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける」事業所(簡単にいうと本業)で加入することになります。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は本業・副業どちらの会社でも適用要件を満たす場合は、双方で加入する必要があります。

副業をすることで社会保険の取り扱いが変わる可能性がありますから確認しておきましょう。

●最後に

今回は「副業を禁止できるのか」をメインに、副業のメリットや留意点を紹介しました。

ちなみに厚生労働省のガイドラインでは「副業の許容状況を公表することが望ましい」とされているので、今後「副業ができるかどうか」を求人の際にチェックする人が増えるかもしれませんね。

従業員の副業とうまく付き合うためには、法律・制度の理解やルール決め・管理が必要になります。

めまぐるしく変化していく状況の中自社の就業規則で対応できるのか、是非一度チェックしてみてください。